吉村昭「戦艦武蔵」を読んだ。

何故か私の中では「大和」が東の横綱だとすれば、「武蔵」は西の横綱。
子供の頃の何かの刷り込みだと思うけれど、戦艦と言えば「大和」(もちろん宇宙戦艦なんて奇っ怪な物ではない)と頭に残っていて、「武蔵」のことはあまり知らなかった。

そんな私に実に分かりやすく「武蔵」の出生の秘密(?)から最期までのめり込むように読ませてもらった、戦艦武蔵 (新潮文庫)を書かれた吉村氏の事については、不覚にも今まで何も知らなかった。
他の作品にも非常に面白そうなテーマの物が多く、これから少しずつ読んでいこうと思った次第です。

さて、この巨大戦艦「武蔵」は第2次大戦末期に遅ればせながらも実戦に登場したものの、巌流島で小次郎を破った剣豪の武蔵のようには行かなかった。
すでに時代の潮流は戦艦を中心とした海の戦いから、飛行機の機動性を生かした空の戦いに移っていたのである。

小説「戦艦武蔵」の出だしは、九州で棕櫚の繊維が買い占められて姿を消していくところから始まる。
何故?何のために?の疑問がひたひたと忍び寄る戦争の影と呼応するように次第に明らかにされて行く。
戦艦「大和」の方は広島に有った海軍の呉工廠で建造されたが、「武蔵」は長崎の三菱重工造船所で建造された。要するに民間企業が兵器を製造したわけである。

旅行で長崎は何度か訪れた経験もあったので、土地についての記述も頭に入りやすかったのが大いに助かった。(去年行ったばかりだからね)

物語は妙な煽りの入った文面とは無縁の冷静な表現にもかかわらず、非常な緊張感をたたえながらクライマックスへと進んで行く。されどこの小説のクライマックスは最後の海戦のシーンではなく、船が進水する場面ではないかと思う。
何故なら、主役は長崎造船所であると言っていいくらいに、船を造るプロではあっても兵器を造るのは素人の人達が前代未聞の巨大戦艦を造り上げていく様が見事に描かれているのである。
正直この進水するまでのストレスが凝縮されていく展開に、まるで我が事のように血圧が上がる心持ちだった。

ともかく、まるで米軍の飛行機にサンドバッグのようにボコボコに攻撃され、日本軍の戦艦にかけた思い空しく最期を迎えることになってしまう。

8月と言う時節柄、戦争に関連のある本をちょっと手に取ってみました。

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